乳がん患者におけるワクチン接種について

乳がん患者におけるワクチン接種について

本邦でも医療者への接種を皮切りに新型コロナウイルスに対するワクチン接種が行われております。
このワクチン接種に関して乳がん患者様より多くのご質問をお受けしており、そのご質問に対するお答えも含めここに意見を少し記載させていただきます。このワクチン自体新しい種類のワクチン(mRNAワクチン)で過去の経験もほとんどないため、あくまで私見も交えての意見であることをご了承いただきたく思います。

1. 過去に薬剤や食事で強いアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こした既往のある方 を除き、基本的にどなたでも接種可能です。過去に強いアレルギーの既往がある方は医師に相談が必要です。薬剤や食事などで軽いアレルギー(湿疹や軽い嘔気など)を起こした経験のある方の接種リスクは一般の方とさほど変わらないと考えます。


2. 新型コロナウイルスに感染した方でも、再度感染する可能性もあるため、回復後3か月以降に接種することが推奨されています。


3. 日本産科婦人科学会から2021/5/12に「妊婦に対する新型コロナウイルスワクチン接種に対し、接種するメリットがリスクを上回ると考えられる」とのコメントが公表されており、妊婦も接種の是非を前向きに検討するべきです。


4. 抗がん剤やそれに準じた薬剤(分子標的治療薬など)を使用中の患者様は、免疫が低下することでワクチンの効果がうまく得られない可能性があります。今の状態や今後の投薬スケジュールなどを鑑みてワクチン接種の是非を考慮しますので、主治医にご相談ください。しかし一つ重要なことは、免疫が低下している方がもし今後新型コロナウイルスに感染した場合重症化するリスクが高いと考えられますので、ワクチン接種の意義はより高いと考えられます。


5. 内分泌療法(ホルモン療法)施行中の方はワクチン接種をしても問題ありません。また放射線治療中でもまずワクチン接種は問題なしと考えますが、多くの放射線治療は1か月程度以内の期間で終了しますので、終了したのち接種することが無難であると考えます。


6. ワクチン接種の注射は乳がん手術をしていない方の腕に施行するのが無難ですが、両側乳がんの手術を受けた方や手術していない側の腕が何かの理由で使用しにくい場合は、その腕が浮腫んだり腫れたりさえしていなければ手術施行した腕でもまず問題ありません。また、何らかの理由で上肢への接種ができない場合は大腿部などでも接種可能です。


7. mRNAワクチンとは、ウイルスそのものではなくウイルス表面のたんぱく質の遺伝情報だけを人工的に合成してそれを脂質ナノ粒子という物質の中に入れて接種しウイルスに対する免疫を作るものであるので、ワクチン接種によりそのウイルスに感染する可能性はありません。ちなみに現在本邦で使用しているファイザー社のワクチン、これから使用されるモデルナ社のワクチンはいずれもこのmRNAワクチンです。


8. 多くの方を対象とした治験結果より、ファイザー社のワクチンの有効率は95%、モデルナ社のそれも94.5%ととても高く(インフルエンザワクチンのそれは50-60%と言われています)、ワクチン接種の意義はとても高いと考えます。


9. ワクチン接種の副反応が心配されますが、強いアレルギー反応(アナフィラキシー)を発症する頻度は約1/20000程度と言われており、またそのほとんどが接種直後に発症することより、接種後は15-30分程度その場にとどまることが義務付けられています。また万が一アナフィラキシーを発症した際に使用する薬剤も必ず接種会場に準備されています。


10. ワクチン接種後の頭痛、倦怠感、悪寒、発熱、接種部位の疼痛などの副反応は接種当日または翌日にしばしばみられていますが、その多くはその後1-2日以内に回復します。

また、接種した側のわきのリンパ節が一過性に腫れることがあるので、乳がんの術後画像検査などを受ける場合は接種から4~6週間空けたほうがよい場合があります。


11. ワクチンの予診票に「その病気を診てもらっている医師に今日の予防接種を受けてよいと言われましたか?」という項目があるためその問い合わせが病院にも多くきていますが、上記の内容から自分はまず接種しても問題なしと考えられる方は、電話等の簡単な確認でもよいと思われます。


2021.5.26

NPO法人あいおぷらす 

平塚共済病院外科統括部長 谷 和行

湘南台ブレストクリニック 寺岡 晃

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